イシューから始めよ
著者:安宅和人氏は、東京大学大学院にて修士号取得後マッキンゼーにて4年間勤務。その後イェール大学脳神経科学プログラムに入学し学位取得。かなり希少なバックグラウンドを持った方です。最近では、アフターコロナなどの話題でNewsPicksで落合陽一氏と共演したりと、活躍の場を広げています。また、直近上梓したシンニホンも話題になっています。
著者が『イシューからはじめよ』 を書いたきっかけは、アメリカでの経験がもとになっているようです。ある知的生産性の高い学者の問題解決の手法について観察していたところ、ビジネスと知的生産の手法が同じであることに気づき、この話をブログで紹介したところ反響が大きく、この本を書くに至ったようです。
最短で仕事を片付けるための”イシュー”という概念
イシューとは 何か?
イシューという言葉は日本語に翻訳するといくつも解釈が出てくるようですが、本書では以下の2つの条件を満たすものをイシューとして定義しています。
- 2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
- 根幹にかかわる、もしくは白黒はっきりしていない問題
製造業ならば、”このやり方” は、製造部門の意見と、設計側の意見が折り合わないが(2つ以上の集団)、昔から ”このやり方” でやっているから特に理由はないが変えていない(決着がついていない)。かつコスト計算(根幹にかかわる)では ”このやり方” が前提になっている。このような場合、”このやり方” がイシューに該当するでしょう。
長年仕事をしていると、本質的なことを無視し、昔からやっているから正しい。となってしまっている場合がありませんか?このようなところにこそ、素晴らしいイシューが隠れているのです。
イシュー度と解の質の高さが仕事の価値(バリュー)を高める
ここでさらに、解の質という言葉を出しましたが、解の質は考察の深さと言い換えてもよいかもしれません。本書では、やみくもに仕事に取組み、データまとめを大量にこなしているだけでは、バリューの高い仕事をこなしていない と指摘しています。
バリューの高い仕事は、解の質(考察の深さ)とイシュー度がともに高いものと安宅氏は、指摘しています。
はじめて行う仕事などでは、とりあえず手を付けられそうなところから始めてみる。という方も多いのではないでしょうか。
問題解決はイシューから始め 終わらない仕事を最速で片付けよ!
目先の問題から手を付けていませんか?数をこなし、絡まった糸を末端からほどいていけば、いつか本当の問題が見え、すべてがうまくいく解決方法が見つかるはずだ。と思っていませんか?
持ち時間は有限です。あなたが時間をかけ努力したアウトプットでも、周囲からはダラダラ仕事をしているように見えているかもしれません。あるいは、そもそも答えのない問題に挑戦していた。ということが分かった。という結果になるかもしれません。文中ではこれを”犬の道”と呼び、生産性の低い手法と紹介しています。
先の製造業での例ならば、”このやり方” に目を向けず、製造側 or 設計側 どちらかの意見に問題を収束させることに注力してしまうと、時間をかけたにも関わらず、問題に取り組む前後を比較したときに、何の変化もなくただ時間をつぶしたことに気づくでしょう。
イシューからはじめよ から学べるポイント
先の製造業の問題ならば、いち早く”このやり方”(=イシュー)が問題の根源になっていることに気づき、コスト上の問題有無の検証をし、コストを切り口にし製造部門、設計部門へ手法を落とし込む。というのが最短の解決方法ではないでしょうか。
この本では以下のように章立てされており、読者がイシューを見つけ問題解決し、アウトプットへつなげる手法が学べます。カッコ内は、私なりに解釈した表現で書かせていただきました。
- 序章 この本の考え方ー脱「犬の道」 (なぜイシューなのか?)
- 1章 イシュードリブン (イシューの見つけ方)
- 2,3章 仮説ドリブン①,② (イシューの分解方法 ※イシューは根幹をなす問題なので、製造業の例で表現したコストのようなわかりやすいものではないので、イシューを切り分け解釈しやすくする必要があります)
- 4章 アウトプットドリブン (自分見立てが正しいことの検証方法)
- 5章 メッセージドリブン (他者へ伝える方法)
文中では、例が多く出ておりビジネス分野だけでなく、脳科学ならではのバックグラウンドを例にしたものもあるので、研究職につかれている方にもヒントになるのではないでしょうか。私の場合は知的好奇心を刺激されるだけでしたが・・・
イシューを学び 自分を変えるチャンスを手にした!
私は、イシューから始めよといわれても、そもそもイシューって???という気持ちで読み始めました。(Amazonのオススメ機能でこの本にたどり着いたのですが)ですが、読み進めるほどに自分の概念になかったものが追加されるのを感じ、日々の仕事の中でも「このミーティングのイシューは何か?」と考えると、議論の内容が末端の枝葉、や小手先に集中していることが多く、改めて時間の無駄遣いをしていたことに気づけるようになりました。日常業務でも、漠然と目の前の問題に取り組むのではなく、問題の源流に注意しながら進めることで基軸のブレない資料製作につながっています。
皆さんの生産性が上がり、定時間内で最高のパフォーマンスを発揮していただきたく、この本を紹介させていただきました。