マルチピッチにトライしてクライミングの幅を広げよう
ボルダラーの方にはマルチピッチってよくわからなくて、敷居が高く感じませんか。グレード的には低いものもあり、クライミング自体はやさしいものもあるのも事実です。マルチピッチのクライミングでは、普段見上げている岩塔を攻略し頂上まで登ります。このブログではマルチピッチのやり方や、必要になるギアを紹介し、どのようにして安全に登っているのか紹介します。
マルチピッチを知ろう
マルチピッチの魅力
マルチピッチの魅力はなっといっても圧倒的な高度感です。大きな壁を前に、ちゃんと登れるのか?事故は起きないかと恐怖を覚えることもあります。しかし、次々と現れるホールド達に自分の持つクライミングのムーブを全力でぶつけ挑むのです。
ルートの基部(スタート地点)に立ち、ルートを見上げると樹木に遮られ岩壁はよく見えません。そこから、登り始めると最初の1ピッチ目(スポーツルートと同じ程度)登りきると木々と同じ程度の高さになり、もう1ピッチ登ると木々を見降ろすほどの高さに到達します。この先は圧倒的な高度感と、開放的すぎるほどの露出感を感じながらのクライミングになります。クライマーだけが岩壁からの風景を楽しめるのです。本当に素晴らしい風景を目にすると、クライマーであってよかった。と思うことがしばしばあるのです。
マルチピッチは”怖い”のか?
マルチピッチをマルチピッチの経験のないクライマーに勧めると良く出てくるワードが、”怖い”だと思います。実際は目の前の岩をどうやって攻略するか?ホールドはどうなっているのか?ムーブはどうしよう と考えているうちに、どんどん高度を稼ぎあっという間にそのピッチの終了点にだ取りついています。終了点で自分で、安全確保を行いルートを振り返るといつの間にか高いところにいることに気づかされます。
山岳映画でクライミングシーンが現れると、大抵大きなトラブルが発生して立ち往生する。というのがありますが、考えてみてください。何も起こらない平和なクライミングは映画的には、ストーリーにならず、誰かしら問題を起こさないと映画は成立しないのです。怖い映画のせいで恐怖感を持っている方は、映画監督の罠にまんまと嵌まってしまっていることに気づきましょう。良く登られているルートは浮石も少なく快適なクライミングが楽しめます。
マルチピッチに必要なスキル
- クライミング自体のスキル
- クライマーのロープをコントロールするビレイのスキル
- プロテクション(カラビナを掛け、ロープをかけるところ)のセット方法のスキル
- 支点の作り方
このようにいくつかのパートに分けることができます。はじめは誰でも 知らない、わからない ところからのスタートです。
マルチピッチでの事故
マルチピッチでの事故は、セルフビレイの取り忘れや懸垂下降での間違いなどの、人為的ミスによるものが多いようです。
もちろん落石などの問題もありますが、落石は不用意にロープが石に当たり誘発している場合が多いので落石の起こる原因を知れば危険性は下がります。私が落石で恐ろしい目にあったのは、人気のないローカルな岩場でしかありません。人気のルートは岩は案てしていると考えられます。
事故にあわないためには以下の3つを注意しましょう。
- 自己確保の方法を覚えて、確認を怠らない。自分一人でも確認するときは声を出す!
- 落石に備え、ヘルメットをかぶる
- 落石の原因を知り、危険なタイミングでは岩陰に隠れる
最後に自分自身を守れるのはあなた自身です。自分の身を守る方法を勉強しましょう。
マルチピッチの登り方をマスターして安全に楽しくクライミング
まずはマルチピッチのシステムを説明します。
マルチピッチは、マルチ(複数)のピッチを数人のチームで登るクライミングスタイルです。ボルダリング鍛えたムーブがあれば、あなたは岩塔のてっぺんに到達できるスキルを身に着けている可能性があります。岩塔のてっぺんはクライマーにしかたどり着けない場所です。そしてあなたはすでに登るためのムーブを身に付けているかもしれません。ボルダーの5級くらいのムーブができれば、マルチピッチに挑戦するチケットを手に入れている可能性があるのです。
マルチピッチ クライミングのやり方(登攀編)
登場人物はAさんとBさん。Aさんが先に上り、後からBさんが登ります。AさんとBさんは、交互に先頭を交代しながらクライミングをしますが、クライミング中に必要になる食料や、水などは後から登るBさんがザックに背負って登りはじめます。以下に順番にやることを書いていきます。コールの内容は、所属する山岳会や、ガイドさんによって異なると思いますので、参考までにしてください。文字だけだとわかりにくいので、Aさんのパートは赤字にしておきます。
- クライミング開始位置に到着
- 食料・水・ギア・靴(登攀後スタート地点に戻るのに歩く距離が長い場合)などの準備
- Aさん:1ピッチ目クライミング開始
- Aさん:クライミング終了 支点作成(自己確保用のアンカーや、ナチュラルプロテクションを使い支点の作成)
- Aさん:セルフビレイを取る インクノット&スリング
- Aさん:Bさんに「ビレイ解除」とコール
- Bさん:ビレイ解除後「解除」とコール
- Aさん:フォローのビレイ準備を開始
- Bさん:クライミングの準備を開始
- Aさん:支点にビレイデバイスをセット
- Aさん:ビレイヤー側の余ったロープを引き上げる
- Bさん:ロープのあまりがなくなったことを「ロープ一杯」とコール
- Aさん:ロープのたるみがなくなったら、ビレイデバイスにロープを通し、カラビナのロックがしっかり閉じているか安全確認
- Aさん:ビレイ体勢に入り、ビレイデバイスに通したロープを引きテンションをかける
- Aさん:Bさんクライミングのビレイ準備がすべて整ったところで「準備OK」とコール
- Bさん:プロテクションにかかったヌンチャクや、カムやナッツなどを回収
- Aさん:ビレイ中に引き上げたロープはセルフビレイで使っているロープやパスなどにかけて整理する
- Bさん:クライミング終了 セルフビレイで自己確保
- Aさん:Bさんから回収したギアを受け取りながら、ギアをギアラックに整理する。
- Aさん:整理し終えたギアラックをBさんに渡す
- Bさん:背負ってきた荷物(食料・水など)をAさんに渡す
- Bさん:クライミング開始
- 3.に戻る
このように文字で書き出すととても長い工程のように思えますが、作業しているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。クライミングパートをのぞけば平地でも練習できます。むしろはじめは、クライミング以外の要素が重要になってくるので、本番の前に、パートナーと平地で立木を支点に見立てて練習すると良いと思います。
マルチピッチでの支点作成
下の写真は支点作成の一例です。基本構造は、安全を確保するためのメインのアンカーがあり、このアンカーで自分自身もセルフビレイで確保します。
自分自身の安全を確保したら、セカンドのビレイやーを確保するためのビレイ器を準備します。
アンカーがあればアンカーを使い、生木があれば生木をうまく使い支点を作成します。
フリーのマルチピッチではほとんどの場合アンカーが打たれている場合が多いと思います。アルパイン的なルートや、沢登りではクラックや、生木などを使う事が多いようです。
支点作成では安全環付きカラビナを大量に使います。大きいカラビナは使い勝手が良いのでいくつか持っておくと良いと思います。
支点にリングがついている場合は、スリングが切れる心配がないので直接スリングをかけることができます。
このような視点では安全環付きカラビナの使用量が減ります。
ビレイ中は、パートナーの姿が見えなくなるので手順などはしっかり覚えましょう。いざとなったら現場でどうにかなる。というような こと はありません。
セルフビレイ(自己確保)で便利なインクノット
インクノットはロープの末端位置にかかわらずロープを固定できる便利な結び方です。
マルチピッチでは便利な結び方になるので、片手で出るように練習しましょう!
ビレイ方法 フォローのビレイ
一般的なロープを使ったクライミングでは、ビレイヤーは基本下にしかいません。ところが上記のようにフォローのビレイは先に上ったリードクライマーが行います。
下の写真はリードクライマーがフォローのビレイをする際のルベルソのセットした図になります。このビレイ方法は一般的な方法だと思います。
- 一番上の安全環付きカラビナを支点からぶら下げます。
- ぶら下げたカラビナを、ルベルソ本体の大きな穴に通してルベルソをぶら下げます。
- ルベルソにロープを通します。ロープの向きは、下でビレイするときと同じで、クライマーのロープが上、ビレイヤー(この場合リードクライマー)側のロープが下になります。
- ロープにも安全環付きカラビナ(写真下のゲートが青色の方)を通します。
- 各カラビナがロックされていることを確認。(声に出して確認するとミスが無くできると思います)
- ビレイの準備完了
このような使用方法ができるルベルソのようなビレイデバイスは、フォローのビレイするときに限りオートロックになります。それは、クライマー側のロープにテンションがかかると、ビレイヤー側のロープを押しつぶし、固定するためです。下の図の青い矢印がロープの向きです。
間違ったビレイとして、リードクライマーが平地と同じ要領でハーネスにビレイデバイスをつけて行う方法があります。この方法を使うと、クライマーがテンションを使った際に、全衝撃が上部でビレイしているリードクライマーにかかってしまいます。大変危険なのでやめましょう。
マルチピッチクライミングのやり方(下降編)
岩壁の頂上まで登ったら、今度は降りる番です。クライミングの事故で一番多いといわれているのが、懸垂下降なのです。やり方を失敗すると落下距離が長いだけに大けが、あるいは死亡事故につながるのです。
下降用支点の準備
何よりも大事なのはロープをかける下降用支点の選定です。よく使うものはその場に生えている木や、下降用に作られたアンカーボルトによる支点です。注意するポイントを下記に上げます。
木の場合
- 生きている木
- 太い木
- ロープの流れが悪くならないようにできるだけ根本にロープをかける
- スリングがかかっている場合スリングが傷んでいないかチェック。古く心配な場合は、手持ちのものを使う。
- 残置カラビナがある場合 カラビナの摩耗や、サビなど強度低下につながりそうなものがないか確認。
アンカーボルトの場合
- 2点以上のアンカーボルトから支点を取る 古くても多いほうが良い
- ボルトの傷み(落石で損傷している場合がある)はないか
- スリングがかかっている場合スリングが傷んでいないかチェック。古く心配な場合は、手持ちのものを使う。
- 残置カラビナがある場合 カラビナの摩耗や、サビなど強度低下につながりそうなものがないか確認。
- リングボルトは安心できませんが、使わないよりマシなので、あれば使います。
バックアップの取り方
支点が木であれ、アンカーボルトであれ少しでも不安な要素があれば、バックアップを取りましょう。メインの支点のほかにバックアップを取る場合は、バックアップ側にテンションがかからないようにセットします。なぜならば、メインの支点の安全性を確認するためです。メインの支点で十分下降できるようでしたら、バックアップは不要です。
バックアップを使う場合は、体重の重い人で確認し、問題ないようであれば次に降りる方がバックアップを回収してから懸垂下降に移れば問題ないでしょう。
やはり心配という方は、手持ちのギアを残置するとになりますがバックアップを残しても問題ありません。命より大事なものはありません。
バックアップとして使えるものとして
- 周りに他の木があれば使う
- クラックがあればカムやナッツを使う
- 岩の突起などにスリングをかける
懸垂下降について
懸垂下降に必要な手袋
懸垂下降中には手の保護をするために、手袋が必要です。急にロープが流れてしまった場合素手でロープをつかむのは非常に危険です。また、長い距離を懸垂下降で降りると、ビレイデバイスがかなり加熱します。加熱されたビレイデバイスを不用意に触るとヤケドする恐れもありますので 必ず手袋をつけて懸垂下降を行いましょう
懸垂下降には革手 オススメの革手の紹介
軍手ではロープが滑りやすく、握力を無駄に使います。そのため私は革手をオススメします。革手の良いところは摩擦のかかり具合が素手に近く、適度な厚みがあるため、熱くなったビレイデバイスも取り扱える点です。ゴム手では摩擦が大きすぎるような気がしており、滑らせて使うときには少々使いにくい気がします。
クライミング用にも革手は出ていますが、わたしはホームセンターでもっぱら買い揃えています。
使用感を重視する方はラム皮がお勧めです。
耐久性は落ちますが、革手にしては、素手に近い感覚が得られます。
耐久性を重視する方は牛側がお勧めです。
伐採用などは皮だけでなく、丈夫な生地を採用し、手を保護してくれます。
安全な懸垂下降の手順と注意点
- セルフビレイを取る
- 支点を作る(上記参照)
- ロープを八の字結び(エイトノット)で結ぶ(下の写真参考)
- ロープをかける
- 下におろすロープの末端も八の字結び(エイトノット)で結び、下降時ロープ末端が宙に浮いていても下降者が落下するのを防ぐ(下の写真参考)
- ロープを下に投げる この時「ロープダウン」とコールし、下にいるクライマーに注意を促す。返答の可能性があるので、コール後すぐにロープは投げない 落石を誘発する可能性があるので十分注意する
- 支点に対して結び目がどちらにあるか決めておく。例えば赤と青のロープを使っている場合懸垂下降後青ロープ側を引いてロープを抜く。と決めておけば、支点にかかるロープは赤ロープでないと抜けなくなる(下の写真参考)
- 下降器とカラビナ(ハーネスについているカラビナ)にロープを通す
- 手にグローブをはめる
- セルフビレイがたるんだ状態で、懸垂下降の体制になり下降用のロープに体重をかけて支点に問題ないか確認する
- 懸垂下降に自信がない場合は、ロープにスリングを巻き付け、スリングの両端をカラビナにまとめハーネスのレッグループなどにかけてバックアップを取る。こうしておくと懸垂下降中に不用意に手を放しても止まる。ただし降りるのに時間がかかる
- 支点や、ロープの結び目の位置に問題なければ下におろしたロープ側を手で持ちセルフビレイを外す
- セルフビレイ解除後は片手は常に降器より下側のロープから手を離さない
- 懸垂下降開始
- ロープが木に引っかかっている場合は、外しながら降りる。片手は常に下降器より下側のロープを持っていること
- 降りたらセルフビレイをとる
- 引き抜く側のロープを30㎝程度引きロープがちゃんと抜けるか確認する
- 上に残っているメンバーは、ロープがちゃんと動いたか確認し、問題なければ先に降りたメンバーに問題ないことを伝える。ロープがクラックなどにスタック(引っかかる)っている場合は、次に降りるメンバーが直す
- 懸垂下降が不慣れなメンバーがいる場合、先に降りたメンバーがロープを持つ。不慣れなメンバーが不用意に降りてしまった場合、下でロープを引けば減速もしくは停止させることが可能
- 全員降りたらロープを引く抜く この時落石を誘発することがあるので、十分注意すること。作業に関係ないメンバーは岩陰に隠れるなどする
やることが多いだけに、気の合う仲間とのマルチピッチはとても楽しいのです。また、すべてのプロテクションがナチュラルプロテクションだと、ルートが比較的やさしくてもかなり充実したクライミングができます。
何よりも安全が大事です。最も気を付けるのは時間です。先にも述べましたが懸垂下降は間違えると大変危険な作業になります。クライミングに時間がかかってしまい、暗い中での懸垂下降は避けましょう。そのため下山の時間をあらかじめ決め、クライミングできる時間を逆算し、定刻になったら最後まで登れなくてもあきらめて下りましょう。きっと次のトライはもっと早く登れるはずです。
マルチピッチ向きのクライミングシューズとは?マルチのシューズは何を履くべきか?
マルチピッチクライミングにはどんなシューズが向いているのでしょうか?
私のオススメは、ズバリ履きやすさ!
マルチピッチでは、とにかくシューズを履いている時間が長い!ボルダリングで使用しているシューズは、高グレードを登ることに重きを置いていませんか?
- 強傾斜でも足が切れない
- 細かいホールドでもしっかりエッジが効く
- ハリボテもしっかりスメアできる
- ヒールが決まる!
- トゥラバーが最高!・・・
一昔前のシューズと異なり最近のシューズはコンペ課題の進化に伴い様々な用途を細分化して、現れる問題に合うようにシューズを作っているように思います。
特定のルートに特に強い!みたいな感じですね。
ですが、マルチピッチクライミングにおススメのシューズはとにかく、心地よさ!を求めるべきです。
マスターでプロテクションを決めながら登り、支点を作り、フォローをビレイし、ギアを回収
集中力を削ぐ要素がたくさんあります。壁の中で集中力を切らさず登る。
そのために、長時間履いていてストレスを感じるシューズを履くべきではありません。
強いてお勧めするならば、ソールが固めで、サイズに余裕がある方が良いと思います。
マルチピッチで強傾斜が連続!というのはあまりないと思います。どちらかと言えばスラブ、垂壁が多いと思います。
細かいホールドを長時間乗り続けると考えると、柔らかいシューズよりも、硬いシューズの方が疲労は軽減されるでしょう。
マルチでクラックやるからTCプロが必要か?
TCプロのように、くるぶしまで保護してくれるシューズは安心感があります。実際クラックを登ると、くるぶしを 擦りむく ことは多いです。
ですが、マルチにおいて優先すべきは心地よさ!
TCプロが履きやすいと感じる方は履くべきです。そうでない方は、違うシューズで問題ないですし、くるぶし を 擦りむくのが心配な方は、テーピングで保護しておきましょう!
マルチピッチで使用するロープはダブルじゃなきゃダメ?
マルチピッチの各ピッチの長さは長くても40m程度(そんなに長いルートは出会ったことはありませんが)だと思います。マルチピッチでは、一般的なスポートルートと比較して長くなることが多いかもしれません。これは、単純に垂直方向だけでなく、岩壁の弱点を突くためにトラバースすることも多いためです。
ここで問題になるのが、ロープの引きずり抵抗が増加しとても重たくなるのです。
ロープの引きを軽くするためには、ロープをできるだけ1直線になるようにプロテクションを取ることですが、クイックドローをアルパインヌンチャクにしても限界があるでしょう。
そもそもルートが屈曲している場合は、ロープを2本使った方が、左右でロープを使い分ければロープが1直線になり、ロープの引きも改善されるでしょう。
一昔前では、ダブルロープを使うのが一般的でしたが、最近ではシングルロープが細くなったこともあり、シングルロープ2本で行っても問題ありません。
また2本使った方が、懸垂下降では圧倒的に早く降りることもできます。
マルチピッチの醍醐味 ギアを使いこなそう!
マルチピッチではどんなギアが必要になるでしょうか?
まずは、思いつく限りマルチピッチで使うギアをピックアップしたいと思います
- ロープ 50m 2本
- ハーネス
- パス(セルフビレイ用のスリング)
- ディッセンダー(下降器 ATC や ルベルソ)
- クイックドロー(ヌンチャク)
- カラビナ 10本以上
- スリング 4本程度
- カム ルートによるが目安は1式
- ナッツ ルートによる
- トライカム ルートによる
- ナッツキー ナチュラルプロテクションのルートの場合
- ギアラック カム、ナッツなどを使うとき
- クライミングシューズ&チョーク もちろん必要
- 登山靴 ルートの取り付きまでが登山の場合
- グローブ ビレイ 懸垂下降 時に必要
- バックアップ用の捨てスリング&カラビナ 人気のないルートは特に
ルートの種類とギア
マルチピッチのタイプは下の3種類に分かれます。種類ごとに必要になるギアがありますので、事前にトポを確認しましょう。
- スポートルートで構成されたマルチピッチ ルート上にハンガー(ボルト)がセットされているのでカムなどの知識が不要で荷物も少ないくなります。
- クラックパートでは、ナチュラルプロテクションと呼ばれるカムや、ナッツでプロテクションを取りながら行うスタイル。カムの知識や支点を作るために知識が必要になります。
- クラックなどのナチュラルプロテクションのみで構成されたルート 先に上げたようにカムや、ナッツのようなプロテクションに関する知識が必要になります
ナチュラルプロテクションのセット方法と注意点
カムの使い方
カムは各社様々な種類が出ていますが、一般的にブラックダイヤモンドから出しているキャメロットが有名ですね。
カムは、トリガーをひいてカサを閉じクラック内に差し込み、トリガーを元に戻すとクラック内でカサ(カムローブ)が開きプロテクションとして使えます。
セット方法をざっくり説明すると以下の通り。使う前にはしっかり練習しましょう。
カムはちゃんと効くのか?カムが信頼できないなら落ちてみよう!
私は、落下時の衝撃でカムが抜けないか心配だったので、スポートルートでトップロープを作っておいて、ルート上のクラックや、ポケットにカムを決め。
そして決めたカムとハーネスをスリングで連結します。それからロープを緩めたのち落下した衝撃をカムに加え、ちゃんと止まるか確認しました。
カムのセット方法(手順)
- カラビナの付いているほうを地面に向ける。(上のルートで撮影した写真を参照)時々水平にセットしている方がいますがフォールしたときには、下向きに引っ張られるので下向きにセットするのです。水平にセットした場合、フォールした勢いでカムが下側に向きます。この時にカムが外れる恐れがあります。
- セットはクラックが平行になっているところを選びます。カムはいくつかのカサがありますが、それぞれのカサが岩に触れている必要があります。このカサすべてが効いていないと、カムがクラックから外れてしまう可能性が高くなります。そのためクラックの平行になっているところにセットするのが最もしっかりカムを効果的に利かすことができるのです。
- カムがよく効くのは引きしろを80%引いた当たりといわれています。クラックのサイズにあったカムを使いましょう。大きいカムを狭いクラックに無理やり押し込まないように注意しましょう。私はてんぱって無理やりカムを狭いクラックに押し込み、外すのに1時間程度かけてしまったことがあります。(ビレイヤーごめんなさい)
- セット後は、手で下向きに勢いよく引張り(テスティング)カムが効いていることを確認しましょう。
一般的ともいえるBD社のキャメロット
かぶりにくいメトリウスのカム
大きなサイズまでカバーする DMMのドラゴンカム
ナッツの使い方
ナッツは一見頼りないように見えますが、クラックのくびれたところにセットできれば、カム以上の安心感が得られます。ナッツの使い方の注意点ですが、カムよりもロープの揺れに弱いです。ですのでナッツに直接カラビナをつけてロープにかけるのではなく、クイックドローや、スリングを使ってロープの揺れがナッツに伝わらないように注意しましょう。
ナッツセットがしにくいクラックとは
パラレルクラック(平行クラック)のようなクラックの幅が変化しない場所では、ナッツを決めるのは難しいですし、安心感もありません。
ナッツを確実に決めるためには
また一つ目のプロテクションとして使うときには、ロープの揺れの影響を受けますので、オポジションなどのセットが良いです。
オポジションは、ナッツ一つでは落下方向に抜けやすい場合や、ロープの揺れが伝わりやすいところでの使用が向いています。
セット後は、テスティングを忘れずに行い ナッツをしっかり食い込ませましょう。
ナッツの材質でも機能が変わります。
一般的なナッツはアルミ合金でできていますが、小型のナッツでは真鍮(ブラス)などの合金でできたものもあります。このような合金は柔らかく、岩にしっかり食い込むといわれています。
トライカムの使い方
トライカムのメカニズムと特徴
トライカムはナッツよりも幅広いレンジ対応できるので、カムという名前がついていると思います。形はナッツのほうに近いですね。私は結構気に入っており、セットのしやすいプロテクションと思っています。
ナッツのようにくびれたところを狙うのではなく、平行クラックに使う事の方が多いです。また、奥行きのないポケットのようなクラックでもセットできる場合が多いので、いくつか持っていて損はありません。
トライカムのヘッド形状にはテーパーがついているので、ナッツのように使う事もできつので、アイデア次第で様々な使い方ができます。
トライカムはヘッドが小さいため、奥行きの無いポケットにも使う事ができます。
様々なクラックに差し込み決め方を試してみてください。
トライカムとカムの違いについては、こちらの記事で書いています
トライカムのセット
セット方法は、ヘッドの溝に沿ってスリングを合わせて折りたたむようにしてクラックの中に滑り込ませます。そして手前に引くとがっちり効きます。セットはテスティングで決まっていることを確認しましょう。
ボールナッツの使い方
ボールナッツは、ナッツの上に球体をカットした形状がのっかった一風変わったプロテクションです。カムのように動くのですが、パッシブプロテクションの一種という位置づけだったと思います。狭いクラックなどで威力を発揮しますが、使っている方はあまり見たことがありません。
ボールナッツは、トライカムのように、ある程度クラックの幅に対応できます。とても狭いクラックでもプロテクションが取れるので便利です。
岩質がツルツルしていると利きが悪く感じたこともあるので、しっかりテスティングを行い決めましょう。
外すときはレバーを引きながら押し込むと外れます。レバーを引いただけでは抜けないので押し込むのを意識しましょう。
ボールナッツの使い方については動画で説明しています。参考にしてください。
ナッツキーの使い方
ナッツキーがないと、ナッツや、トライカムを外すのに苦労するでしょう。
使い方はナッツキーをナッツや、トライカムのヘッドに押し当て、ヘッドが外れるであろう向きにナッツキーのお尻を叩いてスタック(挟まって動かなくなった状態)したヘッド外してやります。また、カムが外れなくなってしまったときにもナッツキーのおかげで回収できたことがあります。ナチュラルプロテクションのクライミングを始めるには1本は持っているべきツールです。
スリングの使い方
スリングがないとマルチピッチは成り立たないといっても過言ではありません。立ち木でプロテクションを取ったり、岩のコブにカウヒッチ(輪ゴムつなげるときの結び方)でプロテクションを取ったりとアイデア次第で使い方は広がります。
また、支点を作る際にも一抱えある石や、木などを支点に使うことが良くあります。このように大きいもので支点を作る場合には200㎝以上のスリングが活躍します。私はアルパインヌンチャク以外のスリングは、200㎝以上が1本。90㎝を3本程度持ち歩きます。
この数はパーティーで持っている本数ではなく個人がそれぞれ持っていた方良い本数です。
知らないと危ないスリングの仕舞い方
ハーネスにぶら下げたスリングをかかとで踏んで、転んで滑落事故という話も聞きます。スリングは束ね、できるだけコンパクトにして持ち歩きましょう。
スリングを踏んづけ、滑落してしまう事故は、冬山などでアイゼン(クランポン)を履いているときには特に注意です。
長いスリングは持ち運ぶのに苦労すると思いますか?心配ご無用!ねじるだけでまとまります。
安全環付きカラビナ
安全環付きカラビナを使う意味は、ズバリ安全性です。
クライミング中に絶対外れてはいけないカラビナに使用します。中間支点や、自分自身の確保、パートナーの確保など、マルチピッチではよく使います。どうしても安全環付きカラビナがない場合は、カラビナを2枚使いゲートの向きを互い違いにします。
各個人で安全環付きカラビナは、4~5個持っていた方が良いでしょう。安全環付きカラビナは自分の確保や、ビレイポイントの作成でしょっちゅう使います。使用例を挙げると下のようになります。
- アンカーで支点作る場合 各支点に1個
- 支点から伸ばしてきたスリングをまとめる 1個
- セルフビレイ用 1個
- ビレイデバイス用 1個
- ルベルソなどのビレイデバイスを支点にぶら下げる用 1個
ちなみに上の写真は、バックアップにも安全環付きカラビナを付けているので、合計で6つ使っています。
安全環付きカラビナの種類
安全環付きカラビナと言っても様々な種類があります。私が使っているのは、スクリューゲート方式のものと、スプリングを使ったオートロック方式の2種類です。
スクリューゲート方式は、ネジでロックしているので使い方が一目瞭然でだれでも使いやすいのが特徴です。注意点はネジのし忘れです。使用数が多い場合は要注意です。
オートロック方式のカラビナは、使い方がメーカによってバリエーションがあるので、慣れるまで時間がかかるかもしれません。
しかし、追加なれるとワンタッチでロックの解除ができるので、時間を節約したい時には重宝します。上記のように安全環付きカラビナを複数使うときには、ネジの開け閉めはめんどくさく、ロックし忘れる可能性もあります。しかし、オートロック方式では手を離すとロックしてくれるのでロックし忘れがないのも魅力です。
ギアラックの選び方
ギアラックは方掛けタイプをお勧めします。理由はクラックを登るときに、ギアが邪魔になることがあります。その時に量肩にしっかり固定されていると非常に登りにくくなります。
ワイドクラックなどではその傾向が顕著となり、クラックに押し込むのが右肩になったり、左肩になったりと変化します。この場合にもギアラックは掛け直しができる片掛けタイプのをススメる理由です。
ルート全体を通してもそこまで大量のギアは必要ない場合が多いのです。もちろん事前にトポなどで、ギアの必要数を確認する必要があります。
ギアラックを選ぶ際、大は小を兼ねるとばかりに たくさんかかるギアラックを選びたくなると思います。ところがギアラックにギアを掛ければ掛けるほど重たくなりますよね。心配になるとギアをとにかくたくさん持ちたくなるのですが、重量的にもトポをみて必要な量+アルファに留める必要があります。
クイックドロー (ヌンチャク)&アルパインクイックドロー(アルパインヌンチャク)の数
10から15枚程度あればたいてい足りるはずです。このうち、4~5本はアルパインヌンチャクになります。またこの10~15本という数字は、チームで持つ量になります。リードにすべて渡すのではなく、セカンドが登る際にも使う可能性がありますので、すべてのメンバーが1本以上持ちましょう。
アルパインヌンチャクは、売っているものもありますが、60㎝のスリングとカラビナ2枚でできます。作り方は下の画像を参考にしてください。
動画でも解説しています。画像ではわかりにくい場合は参考にして下さい。
アルパインヌンチャクが必要な理由について
なぜ このような長いスリングが必要になるかというと、ナチュラルプロテクションはきれいに並んでいないので、ルートが蛇行することがしばしば起こります。このとき、普通の14㎝とか17㎝のクイックドローではロープが屈曲(曲がった状態)してしまい、ロープの引きがとても重たくなってしまいます。
古い残置支点は安全なのか
マルチピッチや、ルートクライミングをしていると古い残置支点に出会うことがあります。この残置支点ですがいつ打たれたものかもわからないので、基本的には使うのを控えましょう。カムや、ナッツをうまく使えば古い残置支点に頼ることは減るでしょう。しかしながら、やさしいスラブなどではいまだに残置支点にを使っているルートもあるのも事実です。
基本的に、自分の安全を確保するという視点で考えてプロテクションセットができれば自分で行う。どうしても古いものしか使えないときは仕方ない。というか”絶対このパートでは落ちない”いう判断になるでしょう。
ルートで見かける安心できない残置支点を下に上げました。基本的に信用しないことが賢明です。
- リングボルト 深さが2㎝あるかどうかなのでかなり弱い
- RCCボルト リングボルトより丈夫であるが、プロテクションとしては古いものになっているので、そもそも不安
- ピトン(ハーケン) これもかなり古いものが多いのですが、意外と丈夫なものもありますが、経年劣化の進み度合いは外からわからないので注意が必要です
- 古いスリング 盲目的に信用してしまうのですが、紫外線でボロボロになっている場合もあるので、捨てスリングぐらいは持ち歩いた方が良いでしょう
参考書籍
終わりに
まだ完全に出来上がっておりませんが、いったん載せたいと思います。関係記事もどんどん書いていきたいと思います。