なぜ止まる?カムのメカニズムについて
ブラックダイヤモンド社などのクライミングギアメーカーでは様々なプロテクションをラインナップしています。
ところで、カムってなぜ効くのか考えてみたことありますか?
何となく、説明書などの図をみて理解したつもりでしたが改めて自分で振り返って考えてみました。
カムはなぜプロテクションになるのか カムのメカニズム
カムの4枚の羽根をカムローブと呼びますが、カムがプロテクションとして機能するためには、クラックとカムローブが接触している必要があります。
ここまでは当たり前ですね。
カムが抜けなくなるメカニズムを考えます
カムが効きやすい平行クラックで考えてみたいと思います。
カムローブの回転中心からクラックまでの最短距離を 長さ1 とします。
カムローブの回転中心から、カムローブとクラックが接触している位置までの距離を 長さ2 とします。
長さ1<長さ2 になるときクラックから、カムは抜けません。
なぜクラックからカムは抜けなくなるのか?
なぜパラレルクラック(平行クラック)では、 長さ1<長さ2 の関係が成り立つときにカムが抜けないと言えるのか。
カムローブの回転中心が、抜けるためには、カムローブとクラックとの接触点を乗り越えて、クラックの外へ移動する必要があります。
カムの写真ではわかりにくいので、簡単な模式図で見てみます。
この図の長さ2のアームが、時計の3時と9時の位置にきたときに、長さ2の腕の長さが、一度クラックの幅の半分(長さ1)まで縮む必要があるということを示しております。
では、カムローブの長さが縮むでしょうか?
縮みませんよね。(落下時には、ものすごい衝撃がかかるので本当は0.数ミリ程度は変化しているかもしれません)
落下時カムは、カムが抜ける力が加わるとカムローブの働きにより、幅広形状が狭い隙間を無理やり進もうとし、スタックしてしまう構造を作り出しているのです。
これは、ナッツが抜けない理由と構造的には同じといえるでしょう。
カムが利かず抜けるとき メカニズムから考える
今度は、カムが抜ける条件を考えてみます。
カムが利かないクラックは、ズバリ フレアクラックと言えるでしょう。
小川山のカサブランカなどの花崗岩クラックでは、フレアクラックをよく見かけます。
フレアクラックにいくらカムを押し込んでも効かないですよね。
カムが利かない理由は、長さ1に対して長さ2が短いことが挙げられます。
長さ1>長さ2 ではなぜカムが利かなくなってしまうのでしょうか。
クラックとカムとの接触長さが、クラック幅より狭くなるため、狭いところから広いところへ移動するだけなので、カムが引っかかる要素がありません。
また、カムはばねの力でカムローブを押し広げているので、末広がりのフレアクラックはスプリングの力で押し出されてしまうのです。
そのため、フレアクラックでは、いとも簡単に抜けてしまうのです。
カムを利かすのに欠かせない摩擦力
カムが利くためには、カムがクラックから滑り出てこないことが重要です。
カムローブのクラックと接触する面には、凸凹がついていますよね。これはクラック内のわずかな凸凹に引っかかるために付けられています。
落下した際には、カムには引っ張られるように力が加わりますが、この時クラックからカムが滑りだしたら恐ろしいですね。
ですがカムには引っ張られるとクラックを押し広げようとする力が働くので、引けば引くほど摩擦力が増大し、抜けにくくなります。
ではどのぐらいの力で押し広げているのでしょうか。
気になったので、調べることにしました。
続きは別の記事で書こうと思います。
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