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経営とデザインの幸せな関係

書評

中川淳 日経BP社

経営とデザインといわれると、自分には関係ないと思ってしまいますよね。本書ではブランドを気付くプロセスのデザインを学ぶことができます。

Youtubeや、ブログなどでは、自分自身をブランディングしファンとつながることで、収益を生み出す仕組みをデザインしているインフルエンサーが多くいます。活躍する各ジャンルのインフルエンサーは彼ら自身がブランド化されていると思いませんか?もし、自分自身のブランド化に興味がある方は「経営とデザインの幸せな関係」をお勧めします。

「経営とデザインの幸せな関係」では、今まで一般に認知されていなかった工芸品や、特定の商品しかない零細企業をコンサルタントする際に使った手法などを紹介しています。経営目線でのお金についての考え方から始まり、ブランド形成のポイント、PR方法。ブランドが軌道に乗ってからの注意点などの広範囲にわたり説明しています。

本書は企業向けに書かれておりますが、モノやサービスを購入する先が一般の方である以上、書かれている内容はそのまま個人がブランドを築き、活躍するためのヒントになると感じました。私はこの本を読んで考え方を知り大変勉強になりました。本書が、あなた自身が活躍するためのヒントになればと思い本書を紹介したいと思います。

決算書について気になる方はこのまま目次の1から読み進めていただき、ブランド化し商品の認知度を高めたい方は、目次の2 コモディティから抜け出せ の項から読み進めていただくと効率が良いかと思います。

決算書の読み方教えます!ポイントを絞って読みとく方法

決算書は企業活動のバロメータ 読み解くポイントはどこ?

改善するためには、まずは現状把握です。コンサルタントは現状からどれだけ改善したか数字で判断する必要があります。そのためには、担当企業の決算書を読み解く必要がるのです。

あなたは、自分の働く会社や、株主通信の決算書を見たことがありますか?たくさんの数字が並んでいて、○○利益、××利益などの言葉が並んでいるのを見ているだけも疲れてしまいます。

著者の中川さんが指摘するのは5期分の8つの項目。この項目の数字を把握すれば営業利益の構造がわかり、どのような点が問題なのかわかるというのです。

なぜ目を通す決算書は5期分なのでしょうか?

決算書は1年分見ても意味がないのです。これは、1期だけでは設備投資の影響や、話題のコロナの影響などのフィルターがあり、会社の収支の流れが掴めないから だと指摘しています。

ブランド化とは差別化 自分自身を見直して 強み や 弱み を把握しよう

コンサルタントを始める前に、著者はコンサルタント先に決算書の提出と”ヒアリングシート”を使って自分が考える強みや弱み等を書きだすことを求めます。ヒアリングシートを書く理由は、コンサルタントの意思によってコンサルタント先の方の意見がずれるのを防ぐためと説明しています。

ヒアリングシートは、コンサルタント先が置かれた状況を把握すると思に、ブランドづくりのヒントにもなります。私も改めて読みなおしつつ書き始めました。全部で5つの項目があるのですが、いざ書き出そうと考えるとなかなか自分のことながら、ハッキリしていないことに気づかされました。

客観的なSWOT分析の進め方 ホントの自分を整理する

SWOT分析の記入例 本書例を改編

ヒアリングシートに書き込んでみて気づくのは、強みっぽいものをひねり出してみても果たしてほんとに強みなのか不安になるばかり。本書によると

強みとは何らかの形で商売に結び付くもの

当たり前といえば当たり前なのですが、いざ商売に結び付くものは?と考えると自分自身に商売に結び付けられる強みなんて思いつきますか?

本書のなかで取り上げている陶器メーカーも”商売に結び付く”という点で行き詰ってしまうのですが、ここで助け舟が出てきます。それは、自分自身だけでなく、自分の所属している環境も含めて考えてみる。という切り口です。

自分のことは自分が一番わかってる!と言いたくなりますが、いざ文字に書き起こし、SWOT分析してみると、自分が秀でていることを見つけるのは困難になってしまいます。しかし、所属している分野などまで すそ野 を広げると見つけることができるのです。

本書では、いくつかのメーカーでの事例を紹介しているので、きっとあなた自身を分析するヒントが見つかることでしょう。

吉野家の敵はすき家?それとも松屋か? 戦う市場について考えよう

何かを販売しようとしたときに、競合の問題は避けて通れません。例えば、牛丼チェーンの吉野家の競合はどこでしょう?

思いつくのは、すき家や、松屋などのチェーン店が思い浮かぶのではないでしょうか?確かにこの3店舗が同じ駅ビルに入っていたら競合になるでしょう。見方を変えて、あなたが吉野家(あるいは、すき家や松屋)を選ぶ理由は何でしょうか?ほとんどの理由は、移動距離や、値段、時間などの方が影響が強いのではないでしょうか?

吉野家の本当の敵は、同じコスト領域かつ、近隣の飲食店になる と考えるのが妥当でしょう。ニュースなどでは、よく比較されていますし、実際すぐ近くに競合他社がいる場合も多いので比較しやすい題材なのでしょう。

もしあなたが、ブログや、Youtube、SNSで目立つためには、戦う市場について考える必要があるのです。どうしてもカテゴリーごとに考えてしまうのですが、本当に着目するポイントは、集まる人びとの目的が何であるかを考えることです。

本書では、ここから自分自身の強みを生かしたポジショニングの方法について、実際のコンサルティングの事例を紹介しながらツールを解説しています。ツールを参考にあなたが有利に立てるポジションを探してみませんか。

コモディティから抜け出せ! 自分自身のブランドの土台を築く

年々厳しくなる雇用環境 資本主義と個人

技術革新により元来仕事とされていた業務が、AI技術の発展や、単純作業の自動化などにより たくさんの仕事が”人がやらなくてよい仕事”へと変化しています。企業から見れば、収益性を高めるためには人件費を抑えるのが手っ取り早く、資本主義の考えでは自然な流れです。

このような時勢を背景に このブログを読んている方には、上がらない給料に不安を覚え、見よう見まねでブログやYoutube、TwitterなどのSNSを始めた方もいるのではないでしょうか。しかしながら、全然アクセス数が伸びず苦労している方も多いのではないでしょうか?(実は私も)

ブロガー、Youtuber、SNSで活躍するインフルエンサーたちを見ていると皆共通しているのが個性的であると言事だと思います。一定の活躍するためには個性的、言い換えれば個人のブランド化が必要になるのです。

ブランドの定義 ブランディングとは?

インフルエンサーと呼ばれる方にはブランドができていると言っても過言ではないでしょう。完成されたブランドを目の当たりにすると到底 到達できない気がしてきます。

ブランドはお客様に認められていく中で作られていくものなのかもしれないですが、はじめから意図してブランド化することもできるのです。これをブランディングと呼ぶのです。

ブランドの定義を本書より紹介します

私はブランドとは「差異化され、かつ一定の方向性を持ったイメージにより、商品・サービス・あるいは社会にプラスをもたらすもの」と定義しています。

一般化するために抽象的でちょっとふわっとしていますね・・・ もう少し引用させていただくと

自分たちが何者であるか、どのような価値のある商品を作っているのかを市場やお客さんに発信し、正しく認識してもらうことです。

私は、こちらの表現の方がしっくりしました。ブランディングの注意点は、マーケティングと混同しないことです。マーケティングは市場調査(マーケットイン)から始まりますが、ブランディングは自分発意(プロダクトアウト)なので、スタート地点が異なります。

モノを生産する立場にいる方は、マーケットインこそ正義で、プロダクトアウトは悪である。という考えが広く浸透している気がするのですが、本書では市場規模の小さい中小企業はブランディングこそ重要という考えなのです。

余談になりますが、私は自動車産業に従事しており、長らくマーケットインすることを注視してきました。その結果コモディティ製品になり、コスト競争に巻き込まれ続けています。私の経験からみても、中小企業がブランド力を持つというのも一理あると思いました。

ブランディング 初めの一歩

前の項の引用にあった”自分たちが何者であるか”というのはブランディングにおいてとても重要です。例えば、「人気ユーチューバーといえばヒカキン」とか「とらやのようかん」などの ○○といえばこの人 と認知されることが重要なのです。

家電などを購入するときにも、無名な方がブログで紹介しているものよりも、家電芸人(最近は死語?)が紹介しているほうが、なんだか説得力や、安心感を得ませんか?家電量販店で見かけたときも、○○さんがネタにしてたやつだ!のように思い出されることもあるでしょう。

前置きが長くなりましたが、お客様に安心感を与えるためにも 自分自身は何者か?という前提はとても重要ですし、やはりブランディングにおいても必要な要素です。この何者であるかという要素を裏付けるのにはストーリーが必要なのです。

ストーリーというと、「生まれは・・・」から始まり歴史を語り始めたくなりますが、少なくともYoutubeで無名な方がこれをやったらすぐに他の動画に移ってしまうことでしょう。

ストーリーは、広く認知されている固有名詞を織り込むことで得られる安心感や、まったく新しいセグメントを作りだすことで、この業界のプロフェッショナル感などを出し、これを聞いた人が わかったような気にさせる ということが重要です。

本書の例を引用させていただくと

広く認知されている固有名詞をつかった場合

山のくじら舎という高知県安芸市にある別のブランドでは、「高知県の」木工ブランドと定義しました。

全く新しいセグメントを作り出した場合

兵庫県豊岡市のバックワークスは、業務用かばんのセグメントでナンバーワンのポジションを取るために「業務用かばんといえばバックワークス」としました。

中略

「業務用かばん」というこれまでにないセグメントをつくり上げて、そこで戦うことを宣言したのです。

上記引用のような会社名を支えるストーリーがあると、わかった気がしてきませんか?少なくとも社名だけでは何屋かわかりませんでしたが、ずいぶん業務内容などの輪郭がハッキリしたと思いませんか?

このストーリーの組み立て方も、先に出てきましたSWOT分析の内容とリンクしてきますので、是非とも本書で学んでいただきたいポイントの一つです。

エネルギーを賢く使ってブランド力を高めよう

限りあるエネルギーを上手に使う秘訣

ブランドを成長させるためには、たゆまぬ努力が必要にりますがそのエネルギーは有限ですし、時間も限られています。そのためブランドを成長させるときには単品勝負にすべきです。

本書では、単品ブランド or 総合ブランドをコップで表現しています。

単品ブランドは細長いコップ、総合ブランドは底の大きいコップ。同じ量の水(エネルギー)を注いだ時に液面が高くなるのは、細長いコップですよね。早く効果を出すためには、狭い領域(細長いコップ)で努力した方が結果につながりやすいと説明しています。

重要! 販路の作り方

良いものを作ったらお客様が勝手にやってきて売れる!そのように考えていては、どんなにモノが良くてもお客様が見つけてくれる可能性は低いでしょう。

この点において物量で解決しているのはアイドル達ではないでしょうか?テレビで大量のCMを流していますので、当然認知度が高くなりますよね。自分の知っている曲がお店などで流れると、安心感が生まれませんか?安心感の生まれるモノやサービスは購入されやすくなります。

無名かつ資金のかかるPRなどできない個人が活躍するためには、やはり注力するポイントを絞り ブランド力を高め、ファンを作り出す必要があります。

お客様とつながるコミュニケーション

個人が活躍するためには、Twitter、Facebook、YoutubeなどのSNSを活用するのがベストといえるでしょう。活動内容は写真にせよ、テキストにせよ受け止める相手がどのように感じるか?という目線が重要です。ポイントを本書から引用しますと

ブランドイメージはお客様の頭の中にできる

PRはお客様の頭の中のイメージを補完するためにあり、本書では”あえて引っかかるスッキリしない言葉を使う”や、”ビジュアルで映える商品であれば写真一枚に絞る方が良い”などのコツを紹介しています。

これ以上書いていると、どんどん本のネタバレになりますので終わりにしたいと思います。もしあなたがモノやサービスで活躍しようと考えているならば、本書はうってつけの一冊になることに間違いないでしょう。

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