kubo's.blog Written by s-kubota

クライミング用のカラビナって壊れないのか?カラビナ検証! 

クライミング

クライミング用のカラビナにはいろいろな情報が詰まっています。

カラビナの材質

A7075を誇らしげに掲げる ロックテリクス

カラビナの材質は基本的にアルミです。一口にアルミと言っても、様々な種類があり、温度を伝えやすい性質のものや、よく伸びる材質。伸びにくいが強度が強いもの。あるいはこすれに強い材質など用途に合わせて選定されています。

カラビナのA7075って何

カラビナの強度

ロックテリクスのカラビナには、A7075と書かれているのを見たことはありませんか?

A7075というのは、アルミの合金の名前でアルミ合金の種類の中でも最も強い種類のアルミです。この合金は、その強度の強さから航空業界でもよく使われる合金です。

強度は熱処理の種類でも変わりますが、0.2%耐力値という指標で505N/mm2もあります。

ざっくり計算すると、1㎜×1㎜の面積で50㎏を吊り下げることができるのです。

50㎏って普通に持ったらとんでもない重さですよね。

それを たった 1㎜×1㎜でやってのけるのです。とても強いと思いませんか?

アルミのカラビナにどうやって色付けるのか

カラビナにはアルマイト処理されているものが多く、アルマイトの上から塗装されているものもあるようです。英語ではアナダイズドと呼ばれます。

アルマイトってよく聞くので知っているつもりになりますが、アルマイトは錆だ!と聞いたら驚く人もいるかもしれません。

アルマイトはアルミニウムに強制的に酸化被膜(つまり錆)を生成する処理です。アルマイトの中にも種類があります。

クライミングのカラビナでよく見かける、様々な色がついているものをカラーアルマイトと呼びます。カラーアルマイトの面白いところは、アルマイトにある非常に小さい穴に色素を詰め込んで、様々な色を題しているところです。

アルマイトの表面は穴だらけ?色を閉じ込める

色を付けると聞くと、塗装のようなイメージを抱くと思いますが、アルマイトはアルマイト組織の中に色を閉じ込めているので、色素成分が外に出ていくことはありません。ただし、黄色など、紫外線に弱い色素は、色抜けしてしまいます。

アルマイト被膜の生成方法は、酸ど電気を使いアルマイト表面にアルマイト層を生成します。

このアルマイト層には、ハチの巣のような六角穴が無数に空いています。この穴に色素を詰め込みます。

因みに、この穴に潤滑性のあるモリブデンを詰め込んだものが、カシマコートと呼ばれ、オートバイなどのサスペンションに使われているそうです。

話がそれましたが、小さい穴に色素を入れた後は、この穴をふさぎます。

この工程を封孔処理(ふうこうしょり)と呼びます。

封孔処理により色素が抜けなくなるのです。

カラビナの製造方法

ブラックダイヤモンドと思われるカラビナの製造方法の動画がyoutubeにありましたので紹介します。

カラビナの製造方法1 一定の長さで切りそろえる

カラビナのもととなる材料は、円柱状のアルミの棒です。このアルミの棒を長い状態で買い、工場で一定の長さに切りそろえるのです。

カラビナの製造方法2 C型に曲げる

切りそろえた丸棒を、アルファベットのCのような形に曲げます。もしかしたら、曲げやすくするために熱処理でアルミを柔らかい状態にしているかもしれません。

テンポよく曲げられていく様子を見ているのは、なんだか楽しく見えます。

カラビナの製造方法3 熱間鍛造でカラビナの形状を作る

トンネル炉(コンベアで運びながら加熱する炉)で曲げたアルミの棒を温めます。

そして熱々になったところで、金型でプレスし、熱間鍛造(ねっかんたんぞう)を行います。

英語ではhot forge(ホットフォージ)とよび、BDのカラビナにも名前がありますね!

どんくさいC型のアルミの棒がほぼカラビナの形状へと変化します。そして、あっという間に形状ができてしまうスピード感!素晴らしいですね。

鍛造と聞くと、刀鍛冶のようにハンマーでドンドン叩きながら成型していくイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、アルミの熱間鍛造は一瞬です。

熱間鍛造後のカラビナは、カラビナの周りに”バリ”と呼ばれる不要物がついています。このバリを落とすために、さらにバリ抜き用のプレス工程が入ります。

こちらも一瞬で抜き終わってしまいます。

動画をよく見ると、カラビナがビシャビシャになっているこのに気づくと思います。これはバリ抜き工程で、アルミが金型にくっつくのを防ぐための潤滑油と思われます。

カラビナの製造方法4 強度アップの 要 熱処理

バリ抜き工程をおえたカラビナは続いて、熱処理工程に入ります。種類にもよりますが、アルミは熱処理に入れることで各段に強度が上がります。言い換えれば熱処理を失敗すると商品価値がなくなってしまう場合もあります。

鉄のかごに収められてたカラビナたちは、大きな炉で加熱していきます。

そして一気に冷たい水に入れて、溶体化処理を行います。

カラビナの製造方法5 表面処理

熱処理を終えたカラビナたちは、こんどは砂利のようなものと共に振動させられます。これを一般的にバレル処理と呼びます。

バレル処理を行うことで、バリ抜き工程で発生した鋭利な形状を丸くし、滑らかな表面に仕上がるのです。

バレル処理では、セラミックメディア(小石みたいなやつ)の種類を変えて、表面の粗さをどんどん改善しています。

その後、鉄のメディア、そして最後はコーンの芯?で磨くようです!

カラビナの製造方法6 アルマイト処理

先ほども述べましたが、アナダイズド処理 つまりアルマイト処理を行います。

動画では、いきなりグリーンになっており完全に飛ばしていますね。

アルマイト処理の動画を紹介します。

丁寧でわかりやすい!

カラビナの製造方法7 ゲートの取り付け

全自動というよりは、半自動といった設備ですね。ただ、動画が古い可能性があるのでこの辺は仕方ないですね。

カラビナ本体に穴を開け、ゲートをピンで止め、ピンの端を塑性変形させてピンの抜け防止をしています。

カラビナの製造方法8 強度確認 動作確認

カラビナは、1個1個強度試験をしてから販売されます。皆さんがお持ちのカラビナをよく見ると、強度試験をした際の跡が残っています。

カラビナの内側に凹んだ跡が見えます。

因みにカラビナはTRANGOのオーバルです。

カラビナの強度 kN って 何キロなのか?

N(ニュートン)は力の大きさというのは何となくわかると思います。

1kgは9.8N 重さに重力加速度をかけたものです。

これ以降は、計算簡略化のために 9.8を10に置き換えて計算します。

カラビナに書かれている24kN この24kN のカラビナが壊れるには何メートル落ちる必要があるのか?計算してみた

例えば上のカラビナ

一番上に24kNと書かれていますね!

この場合 24 × 1000(k:キロ)÷ 10 = 2400㎏ 2.4トンの荷重に耐えられるだけの強さということです。

クライミング用のカラビナが壊れるには何メートル落ちる必要があるのか?

それでは、24kNのカラビナが破壊するにはどのぐらい落ちればよいのでしょうか?

F=ma [N] 体重60kgとして 左の式に数字を入れていきます。

24kN=60(㎏)× a  a:加速度

上記の式から加速度を求めます。

a=24000÷60=400[m/s^2] とんでもない加速度ですね(^^;

ここで 落下しているところから止まるまで 0.3秒かかったとします。あくまで仮定です。

ある速度から、0.3秒で止まるときの加速度が 400 [m/s^2]という関係から ある速度を求めます。

ある速度÷0.3秒=400[m/s^2]の関係が成り立つので ある速度を計算すると

ある速度=120m/s では 自由落下で ある速度 120m/s になるには何メートル落ちる必要があるか計算します。

自由落下 の状態で、速度から落下距離を求めるには下の式を使用します。

落下距離=速度^2÷(2×9.8(重力加速度))

120^2÷(2×9.8)=734m

とんでもない落下距離ですね・・・ 到底ロープの長さが足りそうにない。

この計算はこちらのサイトを参考にしています。皆さんもご自分の体重で計算してみてはいかがでしょうか?

その他クライミング関係の記事はこちらから

クイックドローについてはこちらから